薬剤による硫化水素対策
1.硫化水素の影響
■人体への影響
無色の気体であり、発生に気付かずに吸引して死亡するケースが多発
⇒重体事故につながる危険性(「3.硫化水素の毒性」参照)
■施設の腐食
金属やコンクリートの腐食を引き起こし、施設の老朽化を進行させる
⇒漏洩事故の危険性 膨大な修繕費が発生
■悪臭公害
特有の腐卵臭があり、漏洩により苦情の要因となる
⇒有毒ガスとの認知も高く、漏洩の発覚により問題がこじれる可能性がある
2.硫化水素の発生
硫化水素の物性
組成式 | H2S |
---|---|
分子量 | 34.08 |
主な発生場所 | 下水処理場、し尿処理場、ゴミ処理場、じん埃などの処理場、 各種工業排水処理場、土木作業場など |
性質 |
|
硫化水素の主な発生原因
■有機物が嫌気条件下で微生物に分解される過程で発生する
汚水などの長時間滞留により、空気が供給されないため汚水が嫌気性細菌によって還元、もしくは嫌的分解され、硫化物が生成して発生する。
3.硫化水素の毒性
硫化水素は独特の腐敗臭があり、その毒性にはシアン化水素(青酸ガス)に匹敵するが、実際にはそれ以上有毒なもので局部刺激以外に吸収作用がある。
人間が臭気を感じ得るのは150ppmまでで、この程度のガス濃度は硫黄温泉などで遭遇し、単に一時的な不快、頭痛、胸部圧迫感、倦怠を感ずる程度であるが、10ppmを超えると下記のような症状が発生してきます。
人体への影響
0.025ppm | 敏感な人は臭いを感知できる。嗅覚でできる限界 |
---|---|
0.3ppm | 誰でも臭気を感知できる |
3~5ppm | 不快に感じる中程度の強さの臭気 |
10~15ppm | 6時間居ると眼に炎症を起こす |
200ppm | 5~8分後に眼、鼻、咽喉粘膜に灼熱性疼痛を覚える |
500ppm | 準急性中毒を起こし、15~30分間中には眼瞼刺激、嘔吐、冷汗、下痢、呼吸困難、動機、頭痛、歩行困難意識不明等の諸症状が起こり、さらに長時間居ると気管支炎、肺炎になる |
700~800ppm | 刺激徴候は内攻して30分後にはもはや生命危機 |
1000~1500ppm | 急性中毒により失神、痙攣、呼吸停止、致死が起こる |
4.薬剤による硫化水素除去
- 化学反応による硫化物イオンの吸着
-
対象物中に存在する硫化物イオンと反応し、即座に硫化水素を除去する。
- 抗菌剤による硫化水素生成菌の活動抑制
-
硫化水素を発生させる微生物の活動を抑制し、
持続的に硫化水素の発生を抑制する。 - 酸化剤による硫化水素の酸化および除菌
- 上記1+2の組合せ~即効性+持続性~
5.薬剤の分類
商品例 | ||
---|---|---|
① | 化学反応系薬剤 | ムシュウゲンLJ-D、ムシュウゲンLE etc. |
② | 抗菌剤系薬剤 | ムシュウゲンLV-C etc. |
③ | 酸化剤系薬剤 | ムシュウゲンLY、ムシュウゲンLY-D etc. |
④ | 上記①+② | ムシュウゲンLV-M、ムシュウゲンFT-K etc. |
上記規格品以外でも、対象物の性状に合わせて薬剤を製造が可能なので、一度お問い合わせください。
6.適用方法
対象物の形状 | 適用 | 備考 | |
---|---|---|---|
混入 | 噴霧 | ||
対象物が液体の場合 ⇒液状汚泥や排水など |
◎ | △ | 硫化水素が発生している対象物に対して、規定量の薬剤を混入し、十分に攪拌混合します。 |
抗菌剤系薬剤 | △ | ◎ | 硫化水素が発生している対象物に対して、規定量の薬剤を表面にまんべんなく噴射・散布します。 |
7.薬剤対策のメリット
発生源対策
薬剤を対象物へ使用することで、根本原因がなくなり、対象物の移動
による新たな硫化水素の発生も無い
コスト削減
新たな脱臭装置導入は多大な設備投資が必要となります
発生源対策
硫化水素の発生に応じて添加量調整や添加停止が可能
8-1.対策実施例
■対策の詳細
目的:硫化水素ガスの除去
薬剤:ムシュウゲンLJ-D(化学反応系脱臭剤)
添加量:対象物質に対し300~400ml/m3
効果:1)硫化水素の発生を抑制し、作業環境の改善
2)硫化水素による悪臭問題の未然防止
3)硫化水素による施設の腐食防止
8-2.薬剤対策実施後の結果
対策実施による硫化水素抑制効果
添加物 | 硫化水素濃度 | |||
---|---|---|---|---|
0h後 | 24h後 | 48h後 | ||
薬剤無添加 | - | 80 | 230 | 600 |
ムシュウゲン LJ-D |
300ml/m3 | ND | ND | 58 | 400ml/m3 | ND | ND | ND |
単位:ppm ND:検出限界以下
*薬剤無添加および添加後の試料を30℃の恒温槽に静置し、臭気の経時発生を測定した。
8-3.薬剤使用料
1日の使用量
対象物の日発生量が50m3とすると
年間使用量
添加日数を250日/年とすると
9.薬剤選定までの流れ
- お問い合わせ
- 打ち合わせ
- 現地調査(確認)および対象物のサンプリング
- 机上試験による薬剤選定
- 机上試験報告書提出および薬剤、使用方法提案
- 現場確認
- 実機試験提案書提出
- 実機試験の実施
- 実機試験報告書提出
- ご購入